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2015年8月 1日 (土)

東京オリンピックエンブレム問題と著作権法

 こんにちは。弁護士齋藤理央です。東京オリンピックのエンブレムに対してベルギーの劇場ロゴデザインと酷似していることが指摘され問題となっています。この点、委員会側からは商標権侵害について反論がなされた模様ですが、法的には著作権法上の問題も発生する可能性があります。

 では、この点について著作権法上どのような問題が生じるのでしょうか。

 そもそも、ベルギーで制作され、使用されている劇場のロゴマークについて、日本で著作権法の保護が及ぶのかが問題となります。

 この点、ベルギーは、ベルヌ条約の批准国のようです。したがって、ベルヌ条約5条2項の解釈で、日本においては日本の法律が適用されることになります。ベルギーの劇場のロゴマークも、日本の著作権法上、著作物該当性が肯定できれば、日本においても著作権法の保護を受けることになります。

 ベルヌ条約は、「千八百九十六年五月四日にパリで補足され、千九百八年十一月十三日にベルリンで改正され、千九百十四年三月二十日にベルヌで補足され並びに千九百二十八年六月二日にローマで、千九百四十八年六月二十六日にブリュッセルで、千九百六十七年七月十四日にストックホルムで及び千九百七十一年七月二十四日にパリで改正された千八百八十六年九月九日の文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約」という名前で、外務省のサイト上で公開されています。

 ベルギーの劇場ロゴも、ひとつひとつの構成要素は単純な図形であるとしても、その配置やバランスに高い創作性が認められることから、日本の著作権法上著作物に該当することはあまり問題がないものと思料されます。したがって、日本において著作権法上の保護を受けることになりそうです。

 そうすると、次に問題となるのが、東京オリンピックのロゴがベルギーの劇場ロゴの著作権を侵害しているか否かです。問題となりそうなのは、翻案権侵害、同一性保持権侵害等といえそうです。

 ここで、特に問題となるのが依拠性の点です。

 最高裁第一小法廷判決昭和53年9月7日(ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー事件)
は,「著作物の複製とは、既存の著作物に依拠し、その内容及び形式を知覚させるに足りるものを再製することをいうと解すべきであるから、既存の著作物と同一性のある作品が作成されても、それが既存の著作物に依拠して再製されたものでないときは、その複製をしたことにはあたらず、著作権侵害の問題を生ずる余地はないところ、既存の著作物に接する機会がなく、従って、その存在、内容を知らなかった者は、これを知らなかったことにつき過失があると否とにかかわらず、既存の著作物に依拠した作品を再製するに由ないものであるから、既存の著作物と同一性のある作品を作成しても、これにより著作権侵害の責に任じなければならないものではない」と判示しています。

 本件においては、劇場ロゴはベルギーに存在する劇場のロゴであり、通常日本人が参照する機会はないため、アクセス可能性があったのかが、第一の(そしておそらく最大の)問題点となるでしょう。

 仮に、ベルギーの劇場のロゴについて東京オリンピックのロゴデザイナーが劇場ロゴを参照する具体的な機会があったと立証できれば、依拠性は事実上推定されることになるでしょう。そうなった場合は、オリンピックのロゴデザイナー側で、依拠性の推定を覆す必要が発生することにもなり兼ねません。

 もっとも、ベルギーの劇場のロゴにアクセスできた可能性は低く、具体的なアクセス可能性の立証は困難を極めるものと思料されます。

 この点は、ベルギーの劇場ロゴデザインがウェブサイトやパンフレットなど、どのような場所に露出されていたのか、とくに、現代ではインターネットを利用すれば劇場のロゴは参照することができるため、抽象的な意味のアクセス可能性では足りず、具体的なレベルでアクセスした可能性を指摘していかないと、依拠性の事実上の推定まで及ぼすことは難しいことになりそうです(私見)。

 たとえば、何月何日にベルギーにいたとか、劇場ウェブサイトへのアクセスログなど、いずれも、存在したとしても入手することが相当困難な情報といえるのではないでしょうか。

 これに対して、あくまで、依拠性が事実上推定されない限り、東京オリンピックロゴデザイナー側からは、理屈の上ではアクセス可能性を否定し続けておけばよいことになります。しかし、世間の理解を得るためにも、より積極的に作成過程の資料などを公表することで、作品のオリジナル性を主張していくことも検討されて然るべきです。

 特に制作過程のラフスケッチや、制作ソフトに残っているレイヤーの構成、着想やモチーフなどを公表することで、その制作経過のオリジナル性を相手方や世間に伝えていくことは、検討に値する気がします。

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